熊山遺跡から出土した陶製筒形容器

            

 

           天理大学附属天理参考館所蔵

 

筒形容器に見られる文様

 

拡大写真

 

表面に渦巻状文様と波形状文様が見える。

 

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麻布(または縄)を押し付けたような文様が見える。

 

 

 陶製筒形容器には表面に3種類の文様が表面に見られるが、これとよく似た文様のついた土器片・土器が岡山県瀬戸内市の寒風古窯跡群から出土している。現在、寒風陶芸会館に展示してある。

 

寒風古窯跡から出土した土器片・土器

渦巻状の文様が土器の内側に施してある。説明版には「車輪紋」とある。

 

 

      寒風陶芸会館展示品

波形の文様。これも土器の内側に施してある。

 

 

      

      寒風陶芸会館展示品

麻布?(または、縄?)を押し当てたような文様。表面に施してある。

 

 

      寒風陶芸会館展示品


  寒風古窯跡群とは

 

  7世紀初頭から8世紀初頭の飛鳥時代を中心として約100年間稼働した須恵器の古窯跡。岡山県の瀬戸内市と備前市にまたがるがる邑久古窯跡群の内の一つ。硯や寺院の屋根の端に飾られる瓦の鴟尾や焼き物製の棺である陶棺など、特別な場所でしか使われない須恵器が出土しており、官窯的な性格を持った重要な窯と考えられている。

陶製筒型容器の製作地について

 

 熊山遺跡から出土した筒型容器の表面には上記のように3種類の文様が見られるが、これによく似た文様のついた土器(片)が岡山県瀬戸内市の寒風古窯跡群で出土している。ただし、渦巻き形、波形の文様については筒形容器では表面に施してあるのに対して、出土土器では内面に見られる。

 熊山遺跡の南に位置し、海浜に近い寒風古窯跡群では鴟尾や陶棺など宗教的に必要とされる陶器を作っていたようだ。時代的には熊山遺跡は奈良時代の築造といわれている一方、寒風古窯跡群は7世紀初頭から8世紀初頭に生産していることから、奈良時代の初期で重なる。

 熊山遺跡から出土した陶製筒型容器の製作地の候補として、寒風古窯跡群を挙げてもよいのではないかと考えています。